第3回: 視点とパース

目次


視点を利用した作品

これから紹介する作品群は,複数の面への映像表示によって奥行きを考慮した映像が制作されています.

tilted (2018) Yaporigami, Kezzardrix

本作では、音楽と映像によるリズムの崩壊と形成をテーマにした作品を試みる。
ゲシュタルト崩壊のように、人間は聴覚上、視覚上で一度認知したリズムなどの「かたち」であっても、いつの間にかその全体性を認知できなくなることが知られている。
古代ギリシアでは、リズムをリュトモスと呼び、物の配置や人間性の確立など幅広い分野での「かたち」の形成のことを指していた。リズムを認知する時、人の人間性や感情は形作られ、またリズムを見失う時にそれらは再び結合するまで曖昧な状態に置かれる。この境界線上での揺らぎには妖しい魅力がある。
時間上/空間上で繰り返されるリズムの崩壊と形成を通じて、人間性の揺らぎや変化について問いかけたいと思う。

https://kezzardrix.net/installation-tiltedより

新宿東口の猫

新宿アルタ前広場、クロス新宿ビジョンのための錯視3Dを利用した映像コンテンツ。単なる3D映像としてだけではなく、ランドマークキャラクターとして大きな猫がビルに住んでいるかのように設計され、放映が始まる朝に猫が目覚め、日中に何度も現れ、夜は眠くなって消灯する。高く狭いところが好きな猫の特性や耳やしっぽと猫の感情の連動など、猫の存在感が巧みに演出された。この架空のキャラクターは、キャラクター看板やモニュメントなど、「八百万の神」が日常空間に同居する日本的な独特のユーモアとして海外メディアでも取り上げられた。さらに猫をめぐる二次創作も多く登場し、SNSで拡散。背景のストーリーがSNS上で展開していく現象は、都市の屋外サイネージの枠を越え、ファンが参加してつくる新たなエンターテインメントメディアとしての可能性を示した。VRやパソコンなど閉じた仮想空間ではなく、都市の開かれた屋外ビジョンでバーチャルキャラクターと出会える点も新しい。

https://j-mediaarts.jp/award/single/giant-3d-cat/より

マルチプロジェクションする

これまでは,普段ネットワークエディタの/project1内で作成したOut TOPの情報をPerform Modeで表示するという流れで開発していました.マルチプロジェクションが前提となると,これまでと考え方や具体的な設定が変わってきます.

Window COMP

TouchDesignerにはPCのディレクトリの概念に等しい階層が存在します.
私達がこれまで作業してきたネットワークエディタの上部のパスを見てみると,/project1となっていることが分かります.つまり初期状態ではproject1という階層の中にいるということになります.
さらに詳細に見るために,この状態で目一杯ズームアウトしてみると画像のように,

  • project1というnameのContainer COMP
  • perform1というnameのWindow COMP
  • localというnameのContainer COMP

のある階層に移動します.
そして改めて階層を見ると,/ >>となっていることが分かります.
このように実は,私達はproject1というnameのContainer COMP内でネットワークを編集し,その結果をperform mode(F1キー)でperform1というnameのWindow COMPに表示していたのです.


マルチウィンドウ

それでは以下のように複数のWinodow COMPを使用したマルチウィンドウを実現してみます.


奥行きを考慮した3面プロジェクション

画面中央に消失点がある,1点透視図法に基づいた3面プロジェクションを実装してみます.
このプロジェクトファイルは最終課題で使う方が多いので,できるようにしておいてください.


シミュレータを作る

MATのColor mapにTOPを割り当てることで,空間上にプロジェクションやLEDビジョンなどで表示する内容をシミュレーションすることができます.
今回はコンサート会場のLEDビジョンに映像をはめてシミュレータを実装してみます.