第3,4回: 動画装置の考古学 後編

目次


Scanimation講評

まずはScanimationの講評をします.
何を扱ったのか,その理由や難易度などを聞ければと思います.


岩井俊雄


Juggler


Chroma


3DZoatropeを作る

3D Zoatropeを作るには,

  • 運動
  • 光源
  • 物体

の3要素を考える必要があります.

原理としては,一定速度で回転する台に,一定間隔で点滅する光源ががあることで,回転台上に一定間隔で置かれた物体がアニメーションして見えるということになります.

今回は12FPR(1回転あたり12フレーム)でアニメーションする装置を作ってみましょう.


運動

運動はレコードプレイヤーに任せます.
レコードプレイヤーは本来アナログレコードを針で読み取ることによって,そのパターンが直接的に音に変換される装置です.

レコードプレイヤーは流すレコードによって回転数へ変化させることができますが,今回は33, 45, 78のうち,一番速い78とします.
この数値はRPM(rotations per mintute)の略です.つまり1分間に何回転するかという数値です.ストロボの頻度と物体の配置間隔に関わってくる数値なので確実に理解しましょう.


光源

光源は今回Arduino UNOを使用します.
Arduinoとは,イタリアで開発されたハードウェア制御のためのマイクロコントローラです.何ができるかというと,ライトやモーターをプログラムベースで規則的に動かしたり,光センサや温度センサや距離センサなど様々さなセンサの入力を得たりできるものです.

Arduinoを制御するためには,Arduinoの中にプログラムを流し込む必要があります.
そのために,Arduino IDEと言われるProcessingライクな見た目の開発環境をインストールします.

インストールしたら,以下のコードをArduinoに流し込んでみましょう.

void setup() {
    pinMode(13, OUTPUT);
}

void loop() {
    digitalWrite(13, HIGH);                                                                                                                                          
    delay(1000);
    digitalWrite(13, LOW);
    delay(1000);
}

pinMode関数はArduino UNOの何番ピンの電極を使用するかというのを指定します.
今回13番ピンを出力(OUTPUT)として指定しています.

この状態でAruduino基板を見てみてください.
Lという部分のチップLEDが点滅しています.
実は13番ピンの出力はこのチップLEDに反映されるように作られています.今後みなさんが自身の制作で電子工作することになったときに,プログラムの問題なのか,あるいは回路の問題なのか,というのを切り分ける必要が出たときにはまずはこのLEDチップから確認してみると良いかもしれません.
ここを確認しながらloop関数の中を説明します.
digitalWrite関数は指定のピンにHIGH(5V)または,LOW(0V)を出力します.
delay関数は指定のミリ秒(つまり1000で1秒)処理をせずとどまります.
つまり,これは1秒光って1秒暗いという点滅を繰り返していることになります.

12FPRのアニメーションを作るということは,1回転の間に12コマの静止画をストロボで照らす必要があります.

78[R / min.]ということは,
1秒あたりの回転数は,78 / 60 [R / sec.],つまり1.3[R / sec.]となります.
1回転あたりかかる秒数は,1 / 1.3 [sec. / R]つまり,0.7692307692307692[sec. / R]となります.
1フレームあたりかかる秒数は,(1 / 1.3) / 12 [(sec. / R) / (F / R)]つまり,0.0641025641025641[sec. / F]となります.
単位をミリ秒にすると,64.103….[msec. / F]となります.

このことを考慮すると
delay関数をどう変化させればストロボとして成立するでしょうか?



また,今回ははんだ付けを行ないます.
基本的なルールは,

  1. 4秒はんだごてで対象を温める
  2. 2秒ほどはんだをはんだごてに流し込む
  3. はんだを離して,1秒キープ
  4. はんだごても離す

です.

今回はLEDの電極にパワーLEDドライバの電極をはんだ付けしてもらいます.

最終的な配線は以下のようになります.

パワーLEDドライバは8V-15Vの電源に繋ぎ,LEDの+ーにそれぞれ赤と白の線をはんだ付けしますが,裏側のICの指定の端子に0.5Vから2.5Vの電圧をかけるとそれに比例して調光、もしくは2.5V以上の電圧をPWM信号として受けられます.

電源ソケットはセンターに+,外側にGNDをはんだ付けします.

Arduino UNOのVIN, GND用にもはんだ付けしておきます.


物体

今回は12コマ分アニメーションする物体を配置すればOKです.

今回は3Dプリントの前段階として,平面に印刷した紙を回転させます.

1回転で12フレームということは,以下のようになります.